バルザローナ騎手とプルモワ。英ダービーの決勝線。ソース:Racing Post |
実際には3月にバルザローナ騎手が加わった時点でも「3人は騎乗機会を分け合う」「優先順位がどうとかいうことにはならない」と述べられており、すでに内部ではそうした合意があることは仄めかされていましたが、ここ2週間ほどいろいろ騒がしかったので改めて表明したということです。
Frankie Dettori happy to share rides with other Godolphin jockeys | The Guardian
ゴドルフィンは今年2月にシルヴェスター・ デ・ソウサ騎手と、3月にミカエル・バルザローナ騎手と騎乗契約を結んでいます。
クリスフォード氏は「私たちは若い二人の騎手と新しく契約しました。2人に機会を与えることは当然、重要です。何年ものあいだ、フランキーは私たちにとって唯一の主戦騎手でした。他の騎手を良く乗せることはあっても非公式な契約でした。この2人は正式な専属騎手です。もし3人の内の誰かがある馬で勝てば、次走はその騎手が続けて乗るということを明確にお伝えしておこうと考えました」
(デットーリ騎手以外にも新しく契約騎手を採用した理由について)「わたしたちには以前より多くの出走馬がいます。サイード・ビン・スルール調教師一人だったときよりはるかに多く、(マームード・アル・ザルーニ調教師もあわせると)350頭にもなります」
デットーリとバルザローナのエージェントであるレイ・コクレーンは、デットーリ騎手は新体制になんら不満を見せなかったし、二人は友人だと述べたそうです。また「フランキーは乗りたい競馬場で騎乗します。例えば月曜日にレッドカー競馬場で走る予定の馬がレイセスター競馬場で走る馬より良い成績を残せそうでも、フランキーが必ずレイセスターにいくわけではありません。彼は『遠くまで出かけずに、近くで4着になりそうな馬に乗ることを選ぶときがあるよ』と言っています。できるだけ自宅と家族の近くにいたいのです。ミカエルがレッドカーで騎乗し、フランキーがレイセスターで騎乗するのを見て、人々が『ミカエルのほうが良い馬に乗ってるよ』と思うかもしれませんが、そういうことでは無いのです」
デットーリ騎手は現在41歳。遅かれ早かれ、体力の衰えを技術と経験で補いきれなくなるときは来ますが、以前ほど出なくてもまだまだ乗れると思うし、優秀なジョッキーを3人も抱えておきながらダービーとオークスに1頭ずつしか出走させられないチームに居続けるメリットがあるかどうかという疑問もあり、例えば来年は機会を求めてゴドルフィンを離れることも考えられる。
シルヴェスター・ デ・ソウサ騎手はブラジル出身の31歳。ブラジルでチャンピオン見習い騎手になった後、アイルランドを拠点に2年間騎乗し、2006年からイギリスに移ると昨年2011年は首位と4勝差で最多勝利騎手を逃しましたが161勝を挙げて平地勝利数で2位になりました。
ミカエル・バルザローナ騎手は19歳だった昨年、プルモワをフランス調教馬としては35年振りとなる英ダービー勝利に 導きました。また今年3月、ゴドルフィンと騎乗契約を結び、フランスからイギリスに拠点を移しています。G1は通算4勝、ドバイWCも勝ち、大一番で強いことは証明済みです。デソウサ騎手よりも良い馬に乗る機会が明らかに多く、実質的にバルザローナ騎手がゴドルフィンのファーストジョッキーであると考えることができます。英ダービーやドバイ WCで見せた「早すぎる立ち上がりガッツポーズ」がトレードマークで、「フライングディスマウントからスタンディングボルトアップライトへ」というのが頭に浮かんだものの、いまいち語呂が悪い。
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ちなみにすこし前からゴドルフィンのファーストジョッキーが誰かについて憶測がありました。過去2週間の出来事を紹介してこの記事を終えます。
まず英オークスに出走するゴドルフィン馬カイラニ Kailani についてです。カイラニは前走の英準重賞プリティーポニーS.(芝10ハロン)を7馬身差で圧勝し、追加登録料2万ポンド(約250万円)を支払って6月1日の英オークスに出走すること、またデットーリ騎手ではなくバルザローナ騎手が騎乗することが26日にあきらかになりました。
バルザローナ騎手は2日のG1コロネーションカップでも、前走ドバイワールドカップを勝ったゴドルフィンのモンテロッソに騎乗する予定です。
デットーリ騎手は6月1日の英オークス、2日の英ダービーとコロネーションカップに騎乗予定がないという事態に。英ダービーに騎乗しないとすれば直前に飛行機墜落事故にあった2000年以来のこと。同年を除けば、英オークス・ダービーともに騎乗しないのは1990年以来のことだそうです。カイラニやモンテロッソは前走もバルザローナ騎手が騎乗して完勝しているので理解できなくもない。
しかし英ダービーについても明白な出来事が起きていました。昨年の仏2歳G1クリテリウム・ド・サンクルー(芝2000m)はモハメド殿下のマンダヤン Mandaean がM.ギュイヨン騎手騎乗で優勝。マンダヤンはその後、フランスのA.ファーブル調教師からイギリスのM.アルザルーニ調教師のもとに移籍し、ゴドルフィン名義となって英ダービーを目指すことになりました。マンダヤンは5月、今年初戦として英G2ダンテS.に出走し、モハメド殿下が新ジョッキーとしてバルザローナ騎手を指名しました。このときデットーリ騎手も同じ日に同じ競馬場で騎乗しており、しかしダンテS.には騎乗しませんでした。
結局マンダヤンはダンテS.で6着に敗れたので英ダービーに出走しません。ダンテS.前にバルザローナ騎手が騎乗することについてアルザルーニ調教師は「(昨年までフランスで騎乗していた)バルザローナ騎手にイギリス競馬に慣れてもらうためです」と述べ、ゴドルフィンのレーシングマネージャーは「マンダヤンが勝てばデットーリ騎手でダービーに行くこともあります」と述べていましたが、オークスのカイラニを見れば実際にはその可能性も低かったことが明らかでした。この時点ではまだゴドルフィンのファーストジョッキーはデットーリということになっていましたが、将来、このダンテS.はバルザローナがゴドルフィンのNo.1になった瞬間と見なされるでしょう。
ちなみにモンテロッソ、マンダヤン、カイラニはいずれもマームード・アル・ザルーニ調教師の管理馬であり、調教師についてもゴドルフィンは(こちらはもうすでに)変化の時期が到来していました。
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