11月25日に行われるジャパンカップに出走予定の外国馬5頭、ソレミア、レッドカドー、マウントアトス、ジャッカルベリー、スリプトラについて紹介します。
2年連続で凱旋門賞の1,2着馬が出走する豪華なメンバーになりました。
ジャパンカップに出走した外国馬はディープインパクトが勝った2006年以降、26頭が出走し【0-0-1-25】で、3着に入ったのは11頭立てだった2006年のウィジャボード(欧州年度代表馬2回、牡馬相手にG1を2勝)のみ。
キングジョージ、BCターフ勝ち馬コンデュイットは4着、凱旋門賞馬デインドリームも6着で、欧州で一流の成績を残していてもジャパンカップで3着に入ることさえ難しい。2005年にジャパンカップを勝ったアルカセットも仏G1サンクルー大賞(芝2400m)をしっかり勝っていました。
今年の外国馬で過去の好成績馬に匹敵する実績があるのはソレミアだけで、次にジャッカルベリーですが2年前に伊G1を1勝では足りないでしょう。
日本馬がオルフェーヴル、ルーラーシップ、フェノーメノ、エイシンフラッシュ、ジャガーメイル、ジェンティルドンナなど強力だから最近の傾向どおり日本馬中心で良いと思いますが、
外国馬を買うとすればやはり凱旋門賞馬ソレミアで、穴狙いならマウントアトスはこの枠この人気&ムーア騎手でちょっと買いたい。
ソレミア Solemia(4牝、
JRA公式)
12戦【5-3-2-2】
2012年
仏G2コリーダ賞1着(芝2100m、昨年の凱旋門賞2着馬シャレータを負かして優勝)
仏G1凱旋門賞1着(芝2400m、オルフェーヴルを下してG1初勝利)
下の成績表は
JRA公式(PDF)から一部加工。クリックで拡大します。
牡馬混合レースは年月日に赤の下線を引きました。牡馬混合戦に限ると3位入線2着繰り上がりを含めて4戦2勝2着2回という成績です。これについて血統評論家の田端到氏は
「ソレミアの成績を見ると、もともと牡馬と一緒のレースのほうが強さを発揮するタイプで、これはスタミナの豊富すぎるステイヤー牝馬の特徴。日本で言うとメイショウベルーガなどもサドラー持ちで、このタイプだった。
こういう馬は牝馬同士だとレース質が軽すぎてG1を勝てず、ベストパフォーマンスは牡馬との混合戦になることが多い。天皇賞・秋と札幌記念で強い競馬をしたヘヴンリーロマンスも、母父サドラーの牝馬だった。」
と
指摘されています。
昨年の仏G2コンセイユドパリ賞(芝2400m)勝ち馬ヴァダマーはその前走の仏G2ニエル賞2・1/4馬身差3着し、また同年の
G1英ダービー4・3/4馬身差7着などなかなかの成績を挙げた中堅クラス。
準重賞4馬身差圧勝後に出走した仏G3デドゥヴィル賞は、 中団内を追走から最後の直線で内から勝ち馬と同じ勢いで伸びましたが残り150mで2位入線馬と内ラチとの間にまともに挟まれて下がり、それでも体勢を立て直してからの残り100mはやはり勝ち馬とほとんど変わらない脚で伸びていました(
レース映像、有料)。2位入線馬はのちに
仏G1カドラン賞(芝4000m)を勝つ牝馬モリーマローンです。
そして凱旋門賞勝利と。牡馬混合戦でかつレベルが高い競走のほうが力を出しやすいのは確かかも。
血統(5代血統表、
英語、
netkeiba)
父ポリグロート Poliglote
母ブルックリンズダンス Brooklyn's Dance
母の父シャーリーハイツ Shirley Heights
サドラーズウェルズ系×シャーリーハイツという欧州大レースでおなじみのニックス。半兄(父サドラーズウェルズだから3/4同血)のプロスペクトパークはG1仏ダービー(芝2400m)の2着馬。
1992年生まれのポリグロートにとってソレミアの凱旋門賞が産駒初の欧州平地G1勝ちとなりました。南米にはすでに複数のG1馬がいました。
母は仏G2クレオパトル賞(芝2500m)勝ち馬。
ソレミアは父父がサドラーズウェルズで、Val de Loir の4×4という血統であり、だから
凱旋門賞の予想で△をつけたのですが、この組み合わせを持つ凱旋門賞馬は過去1頭おり、それが99年にやはり不良馬場で勝ったモンジューです(父サドラーズウェルズで、Val de Loir は4代前)。
総評
普通に考えて日本向きの切れはないでしょう。ペリエ騎手も「大一番直前の1週間、毎日のように雨が降った。その時にはチャンスが出てきたかな?って思った。」とインタビューで
答えています。ちなみにサドラーズウェルズの全弟フェアリーキングと Val de Loir の組み合わせだと96年のエリシオが該当(Good to Soft、日本だとやや重か重でした)。
そういえばエリシオも凱旋門賞を勝ったその年にペリエ騎手とのコンビでジャパンカップに出走して3着同着しました。あのときのようによどみのない流れを前で競馬すればチャンスはあるかもしれない。ペリエなら逃げたりもしそう。
レッドカドー Red Cadeaux(6セン、
JRA公式)
31戦【6-8-5-12】
2011年
豪G1メルボルンカップ2着(芝3200m)
2012年
英G1コロネーションカップ2着(芝約12ハロン)
英G2ヨークシャーカップ1着(芝14ハロン)
成績表(
JRA公式PDFのキャプチャ。クリックで拡大)
今年11月のメルボルンカップは他にジャパンカップ出走予定のマウントアトスとジャッカルベリーも出走。上がりの速い競馬になり上位10頭中6頭が上がり33秒台を記録し、レッドカドーは24頭立ての18-20番手あたりを追走して33秒78の上がりで8着でした。
残り400m手前で他馬に前に入られるロスがあった点はマウントアトス(5着)も同じ。外を回った2頭に対し、3着ジャッカルベリーは内からうまく進出したので、この3頭がその着順どおりの実力ではないです。
2012年メルボルンカップのレース映像。2分40秒ぐらいから見ればいいとおもいます。勝負服は下の画像を参考。一番左の赤の帽子がレッドカドー、そのすぐ右、紫色っぽい帽子と勝負服がマウントアトス。ジャッカルベリーは内ラチ近くの黄色の帽子・勝負服。
昨年12月の
G1香港ヴァーズ(芝2400m)は3着で、6着トレイルブレイザーには先着。トレイルブレイザーは後ろから行き過ぎたことが敗因だと思うし、また2着のサムザップは今年4月の
G1クイーンエリザベス2世カップ(芝2000m)でルーラーシップの4馬身差2着に負けています。
血統(5代血統表、
英語、
netkeiba)
父カドージェネルー Cadeaux Genereux
母アルティシア Artisia
母の父パントレセレブル Peintre Celebre
父カドージェネルーはヨーロッパの短距離G1馬。産駒は主に短距離で活躍するが、母次第ではレッドカドーのように長い距離で走るものもいる。
母アルティシアは3戦未勝利。
兄弟など近い世代に目立つ活躍馬がいませんが、3代母が愛1000ギニー勝ち馬で英1000ギニー2着。また2代母の半弟が英2000ギニー、英チャンピオンS.などを勝ったハーフドです。
総評
外国馬では2,3番手評価ですがジャパンカップのメンバー相手だと格下でしょう。マウントアトスに対して「この枠ならちょっと買いたい」と思っているのにその隣のレッドカドーを切るのは特に根拠がなく、強いて言えばマウントアトスのムーア騎手のほうが人気薄を持ってきそうだから、というくらい。
マウントアトス Mount Athos (5セン、
JRA公式)
21戦【7-0-1-13】
2012年
英G3ジェフリーフリアS.1着(芝13ハロン61ヤード、約2670m)
豪G1メルボルンカップ5着(芝3200m)
成績表(
JRA公式PDFのキャプチャ。クリックで拡大)
昨年はG3で5頭立て4着し、他に勝てないながらも高額賞金のハンデ戦で好走を続けていました。
今年はクマーニ厩舎に移籍しハンデ戦、準重賞、G3と3連勝。その英G3ジェフリーフリアS.では昨年のG1英セントレジャー1,2着馬を負かしています(
レース映像、要登録)。
メルボルンカップは5着。上がり3ハロンは33秒55と出走24頭中で2番目に速いものでした(最速は3着ジャッカルベリーの33秒53)。
メルボルンカップはハンデ戦でマウントアトスは54kg、レッドカドーとジャッカルベリーは55.5kgだから恵まれていたし、また残り400mで受けた不利はレッドカドーより軽く、また道中はレッドカドーより前で競馬したのが先着できた主な理由で、前走だけでレッドカドーより強くなっているとは言えません。
血統(5代血統表、
英語、
netkeiba)
父モンジュー Montjeu
母イオ二アンシー Ionian Sea
母の父スリップアンカー Slip Anchor
モンジューは99年の凱旋門賞馬で、同年のジャパンカップは4着。
イオ二アンシーはフランスで準重賞1勝だが、産駒にはマウントアトスのほかにG1英ダービー2着のグレートギャツビー、今年の
仏G1パリ大賞勝ち馬インペリアルモナークがいる。マウントアトスはその2頭と3/4同血。
総評
実績はG3を1勝だから外国馬で5番手評価が妥当。しかし今年上昇し始めてからはまだ底を見せていない点が魅力。
ほとんどの出走馬がそうだったとはいえメルボルンカップの上がりは速く、この枠なら前の内ラチ沿いで脚をためた場合に去年のジャガーメイルのような競馬で3着に突っ込んでくる可能性はありそう。
マウントアトスができるならその役はレッドカドーも努められるはずですが、多分この「ちょっと買いたい」気持ちの大部分はメルボルンカップで本命を打ったからなんですよね。24日午前のオッズではジャガーメイル3着付けに比べてマウントアトス3着付けは2-3倍のオッズが付いているので資金に余裕があれば押さえるかもしれない。
アルカセットでジャパンカップを制しているクマーニ調教師の管理馬であるのも怖い。
ジャッカルベリー Jakkalberry(6牡、
JRA公式)
26戦【10-2-4-10】
2010年
伊G1ミラノ大賞1着(芝2400m)
2012年
G1ドバイシーマクラシック3着(芝2400m)
豪G1メルボルンカップ3着(芝3200m)
成績表(
JRA公式PDFのキャプチャ。クリックで拡大)
香港ヴァーズ(芝2400m)は2年連続で出走し5着7着で、2010年は4着ジャガーメイルに先着できず、2011年はトレイルブレイザーに先着できなかった。昨年のヴァーズは先行したのが敗因だと思いますが。
ドバイシーマクラシックは外から追い込んで3着。1着シリュスデゼーグル、2着セントニコラスアビーに3・1/2馬身差なら悪くない。
前走メルボルンカップはマウントアトス、レッドカドーに先着する3着。上がり3ハロンは出走24頭中最速の33秒53。とはいえ、ジャッカルベリーが最終コーナーで内をスムーズに回ったのに対し、マウントアトスらは大外を回っているので単純比較はできず。
ボッティ師は「日本馬はトップクラスなので厳しい戦いだが、2400mへの短縮自体はこなせる。晴れて欲しい」とのこと。
血統(
英語、
netkeiba)
父ストーミングホーム Storming Home
母Claba di San Jore
母の父バラシア Barathea
父ストーミングホームはミスタープロスペクター2×3という血統だが、G1英チャンピオンS.1着など中距離で活躍。代表産駒にはジャッカルベリーのほか、豪G1ヴィクトリアダービー(芝2500m)を6馬身差圧勝したライオンテイマーがいる。
母は伊1勝馬。産駒にジャッカルベリーのほか、
伊G1共和国大統領杯1着、G2伊ダービー(芝2200m)1着のクラッカージャックキング、G1伊ダービー(芝2400m)勝ち馬アウェルマーダクがいます。どちらも父にマキャベリアンがある点はジャッカルベリーと同じで、特にアウェルマーダクはかなり似た血統(
血統表)。
母母は日本向けの切れもありそうな血統です。
総評
実績では外国馬2,3番手でレッドカドーとほぼ同格も日本のトップとは大きな差がある。
自身も含め兄弟にジャパンカップと相性が良いイタリアG1好走馬が複数いる点は良いが、香港などの実績を考えるといまさらジャパンカップで買えるかは疑問。内枠ならメルボルンカップの再現を狙えたかもしれないが11番枠で、より内に入ったマウントアトスやレッドカドーのほうが有利なような。
スリプトラ Sri Putra(6牡、
JRA公式)
29戦【7-4-2-16】
2009年
仏G2ギョームドルナード賞1着(芝2000m)
2011年
英G1プリンスオブウェールズS.3着(芝10ハロン)
英G1エクリプスS.3着(芝10ハロン)
2012年
英G2ヨークS.1着(芝約10.5ハロン)
成績表(
JRA公式PDFのキャプチャ。クリックで拡大)
2011年は英G1で2戦連続3着したがどちらも6馬身離されて完敗。今年は英G2ヨークS.を勝って2年半ぶりに重賞を勝ち、英G1プリンスオブウェールズS.はソーユーシンクの4馬身差。しかし他のレースが全然駄目で。
2400mは2010年に2戦したのみ。英G3で2着、トルコG2で2着。英G3グロリアスS.の勝ち馬レッドウッドは加G1ノーザンダンサーS.1着、香港ヴァーズ2着、ドバイシーマクラシック2着と芝12ハロンで活躍した馬ですが。
血統(
英語、
netkeiba)
父オアシスドリーム Oasis Dream
母 ウェンディリナ Wendylina
母の父インザウイングス In the Wings
オアシスドリームは現役時代は短距離G1馬で、種牡馬としてもマイル以下を中心に一流馬を多数輩出し、中距離でも英仏米でG1を5勝したミッデイなどがいる。
母は未出走馬。母の父インザウイングスは1996年のジャパンカップ勝ち馬シングスピールの父。
総評
実績はマウントアトスを上回るが、ここまで一流馬とは壁を感じる結果しか残しておらず、ジャパンカップで好走出来るとは思えない。